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RSウイルス:(23→) 7 → 2
アデノウイルス:(0 →) 0 → 0
溶連菌:(0 →) 0 → 0
感染性胃腸炎:(57 →) 81 → 45
水痘:(1 →) 0 → 0
手足口病:(65 →) 32 → 18
突発性発疹症:(3 →) 1 → 3
ヘルパンギーナ:(17 →) 9 → 3
インフルエンザ:(0 →) 0 → 0
新型コロナ:(135 →) 154 → 125
長いお盆休みをいただいてしまいご不便をおかけして申し訳ありませんでした。おかげさまでスタッフ一同、心身充実できましたので、またバリバリと診療させていただきます。
手足口病・ヘルパンギーナ・RSウイルスが減ってきたため、全体としての発熱者数は減りました。ただ一方で、コロナの陽性者数・陽性率は上がってきています。
現在流行している株は非常に感染力が強いです。家族内に1人でもいればあっと言う間に全員に蔓延します。同じ家で生活している限り、部屋を分けた程度の隔離では感染を防ぐことは難しい印象を受けました。
今週はコロナ陽性者のけいれん発作で受診される方が3〜4名ほどいました。インフルエンザと同様、他のウイルスよりもけいれん発作を起こしやすいウイルスなので、特に乳幼児のお子さんは一人にしないようにしましょう。多くは一回だけ数分のけいれん発作を起こして終了となります。その後はけいれん発作を起こすことはありませんし、何かしらの後遺症をきたすこともありませんので心配は無用です。
万が一けいれん発作を起こしたなら、体ごと顔を横に向け、吐いた場合に吐物が気管に詰まらないような姿勢にしましょう(舌を噛ませないようにとタオルや棒を口に入れる方がいますが、窒息の危険があるので、絶対にやってはいけません)。5分以上けいれん発作が続くようなら救急車を呼びましょう。15分以上続くとけいれん重責発作といって、髄膜炎や急性脳症などの可能性が出てくるため入院加療が必要になります。逆に5分以内で収まるようなら焦る必要はないので、自家用車で近医を受診しましょう。ただ、5分以内で収まっても、2回、3回と繰り返す場合はけいれん群発といって、これも髄膜炎や急性脳症などの可能性が出てくるため、場合によっては入院加療が必要になるので注意が必要です。
近々、5〜11歳のコロナワクチン3回目の接種が承認されることになりました。そして接種が「努力義務」になることも決まりました。接種するように努めなければならないようですが、罰則や強制力なく、当事者の判断に委ねられます。つまり結局はこれまでと変わらないということです。
コロナワクチンの効果として、感染予防・重症化予防などが挙げられます。海外のデータでは幅はありますが、重症化予防効果が40〜80%あると報告されています。とても素晴らしい数字です。
では小児の重症化率や致死率はどんなものなのでしょうか?
厚労省の最新のデータ(2020年9月〜2022年8月20日現在)では、0〜19歳の陽性者は累計で4282034人です。そのうち、重症者は174人、亡くなったのは22人なので、
・重症化率:174÷4282034×100=0.00406%
・致死率:22÷4282034×100=0.000514%
となります。なお、ここでいう重症化とは、人工呼吸器が必要になったり、ICUでの治療が必要になったりすることを意味します。低すぎてよくわからない数字ですが、2万5千人に1人が重症化し、約20万人に1人が死亡する結果となります。具体的な例に置き換えてみます。例えば10万人都市の印西市民が全員0〜19歳だったとします。その全員が同時にコロナに感染しても重症化するのは4人、亡くなるのは0.5人(つまり誰も亡くならない、もしかしたら1人亡くなるかもしれない)ということです。ただ、このデータはこれまでの合計なので、各波ごとに計算すると多少の差異が出てくること、この先の数字がどうなるかはわからないことなど、注意が必要です。
最近はニュースで「乳幼児の感染拡大が止まらない」「けいれんする子が多い」「小児も重症者増加」などが目につきますが、別に感染が拡大することやけいれん発作を起こすことが重症という訳ではありません。手足口病でも突発性発疹症でもRSウイルス感染でも感染は拡大するし、けいれん発作を起こします。死亡する子もいます。コロナだけ特別ではありません。
こういった数字とワクチンを接種した場合のメリット・デメリットを天秤にかけて接種することになりますが、現時点で全国の5〜11歳でコロナワクチンを2回接種した子は全体の17.4%です。多くの親御さんが接種の必要性を感じていないという結果です。接種してもバンバン感染している、そもそも重症化しないのに接種するメリットも何もないと感じているのでしょう。とは言え、ワクチンを接種せずに何かしらの後遺症を残してしまったり、亡くなられてしまったりした親御さんにとってみたら、やっぱり接種しておけば良かったと思うのでしょうが・・・。
また、ワクチン自体に対する不安もあるかと思います。10人弱のお子さんは不幸にも接種後に亡くなっていますが、当初心配されたよりは副反応は少ないようです(痛み:50%以上、頭痛:10〜50%、発熱・下痢・関節痛:1〜10%)。ただ、接種してから数年後、数十年後にどうなるのかといった長期的な副反応があるのかどうかは誰にもわかりません。そこが親御さんが一番心配しているところでしょう。例えば血液製剤ができたころ、輸血した患者の中で数年〜十数年後、肝臓に異常をきたす人たちが出てきました。何が原因なのか全くわかりませんでしたが、後に血液製剤から感染したC型肝炎と判明しました。また、例えば日本脳炎ワクチンは1950年代から開発されましたが、副反応を減らすべく改良が続けられてきました。しかし、重篤な副反応の報告のため2005年に一旦接種の推奨が中止されています(2011年には接種再開となりました)。医学に限らず、物事には短期的な視点と長期的な視点が必要になりますが、今回のコロナワクチンは後者に関して全くデータがありません。あるのはたった1年半のデータのみです。もしかしたら長期的な副反応はなく、安全なのかもしれませんが、現時点でそれを判断することは誰にもできません。
少し否定的なことを述べてきましたが、実は科学の進歩にこの経過は欠かせません。接種する・しないは自由ですが、接種する人がいるから短期的・長期的な反応が明らかになり、次のステージへとステップアップできるのも事実です。これは全てのワクチンの歴史に当てはまります。コロナワクチンが悪いわけではなく、ただ新しいが故に試行錯誤の時期にあるだけなのです。これから集まってくるデータを元に、いろいろと改良が重ねられ、ゆくゆくは現在のインフルエンザワクチンのような立ち位置になるかと思います。
長い年月をかけて使用されていて安全とわかっているワクチンなら何も考えずに接種して良いでしょう。また、多少副反応のリスクはあるけれど感染するよりは全然良いという場合も接種するでしょう。今回のコロナワクチン、メリットがデメリットを上回ると判断するなら接種するのが良いでしょう。
なお余談ですが、政府は0〜4歳にもコロナワクチンの接種を開始する方向で動いています。0〜1歳はヒブ、肺炎球菌、4種混合(破傷風、ジフテリア、百日咳、ポリオ)、B型肝炎、日本脳炎、など絶対に感染してはならない病気の予防接種が目白押しです。罹ったら高率で死亡する、またはほぼ100%神経学的後遺症を残します。これを差し置いてコロナワクチンを接種しましょうとならないことを心から祈ります。
☆当院は厚生労働省「感染症発生動向調査」の小児科定点になっており、上記は対象となる疾患を集計したものです。
☆印旛保健所管内の感染症情報はこちらhttp://www.inba-med.or.jp/update.html