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子宮頸癌ワクチン(シルガード9)のお話です。
接種対象が小学校6年生〜高校3年生のため、夏休みに接種される方が多いので周知させていただきます。
接種率は数年前まで数%でしたが、直近では50%を超えるまでになりました。しかし、逆に言うと、まだ 半数近くの方が接種を悩まれていたり、希望されていなかったりという状況です。どうしようか悩まれている方達の後押しができればと思います。
日本では毎年約11000人の女性が子宮頸癌を発症し、約2900人が亡くなっていきます。ガンはお年寄りの病気と思っている方もいるかもしれませんが、子宮頸癌は違います。発症年齢のピークは25〜45歳とまさに子育て真っ最中の時期に重なります。私は研修医の時、千葉県がんセンターに勤務していました。麻酔科を3か月廻り、色んなガンの手術の麻酔を担当しました。ほとんどがお年寄りですが、子宮頸癌は若い患者さんが多く、そのほとんどが小さいお子さんを持つお母さんでした。治療の成果なく、残念ながら亡くなってしまった方を何人も見てきましたが、小さい子供を残していく母親の気持ちを考えると言葉になりません。しかし、子宮頸癌ワクチン(シルガード9)を接種すれば、こういった悲しいお母さんを9割近く減らすことができます。
子宮頸癌はヒトパピローマウイルスの感染によって起こります。性行為で感染するため、実はほぼ全員がこのウイルスに感染します。子宮頸癌を発症する・しないは、感染したウイルスの型(ガンになりやすい・なりにくい)や自分の免疫がどこまで癌化した感染細胞を駆逐してくれるかによります。ここで重要なのが、子宮頸癌ワクチンはヒトパピローマウイルスの感染を予防しますが、ウイルスに感染した細胞に対しては効果がないということです。つまり、初めての性行為の前に子宮頸 癌ワクチンの接種を完了していることがとても大切になります。
とは言っても副作用が心配で接種をためらう親御さんが多いのは事実です。かつては接種後に寝たきりになってしまった方達がテレビで放送されましたが、その衝撃は非常に大きいものでした。ただ、これは子宮頸癌ワクチンだから起きたというわけではなく、他のワクチン接種でも起き得ます。報道のあり方に問題があります。重い副反応が生じる確率は0.006%(10万人に6人)です。更に治癒不可能な副反応が生じる確率はもっと低くなります。一方で、一生のうちに子宮頸癌にかかる頻度は75人に1人と言われています。その確率は1.33%です。重い副反応を生じるリスクよりも子宮頸癌にかかるリスクの方が圧倒的に高い(222倍)ことがわかります。
副反応に関しては2015年に名古屋で有名な疫学調査が実施されました。子宮頸癌ワクチンを打ったグループと打たないグループに分けて、その後に24の症状(めまい、脱力、歩行困難、過呼吸、知能低下、視力低下etc)を生じる頻度に差が出るか、とういうものです。驚くことにワクチンを打っていないにもかかわらず24の症状を生じる方達がいて、どちらのグループも24の症状の発症に有意差を認めなかったという結果になりました。子宮頸癌ワクチンはしっかり時間をかけてデータを収集し、安全性が確認できていて、世界中で接種されています。海外では接種率が実に90%以上の国が多いなかで、日本においては57%(11〜16歳)と、先進諸国の中でダントツ最下位です。こんなに良いワクチンを無料で接種できるのに、非常にもったいないなと思います。
75人中74人は子宮頸癌になりません。それならワクチン打つ必要なくない?と思われる方もいるかもしれません。しかし、なってしまったら、待っているのは悲しい未来だけです。75人の中の1人にならないようにワクチンを打つのです。ワクチン=保険と考えるとわかりやすいかもしれません。車を運転する人は保険(強制と任意)に加入している人がほとんどと思います。なぜ入るのか。事故してしまった時に備えるからです。自分がいくら気をつけてももらい事故をすることだってあります。子宮頸癌も同じです。自分が気をつけていても、相手がウイルスに感染していればもらい事故を起こす確率は高くなります。この人なら大丈夫は通用しません。相手の性経験は不明です。オーラルセックス(口腔性交)でも感染は成立します。パンツを脱いだ瞬間からコンドームと手袋を着用し、キスもせず、粘膜と粘膜の接触を一切断つのであれば感染のリスクは低いですが、そんな人はまずいないでしょう。性行為という子孫を残すために必要な本能的な行為で感染する以上、世の中から消し去ることは不可能な厄介な病気です。自分の身を守るのは自分ですが、守るべき対象が未成年であれば、その役目は我々親が果たすものとなります。
なお、子宮頸癌のお話を中心にしましたが、ヒトパピローマウイルスは中咽頭癌、肛門癌、膣癌、外陰癌、陰茎癌といった悪性腫瘍や尖形コンジローマ(陰部にイボが多数できてカリフラワーになる)の原因ウイルスでもあり、シルガード9はこれらも予防する効果があります。近年は男性の接種も増えてきており、男性も定期接種可能な自治体も出てきています。
子宮頸癌ワクチンは少しずつ接種が広まってきています。少しでも興味を持ってくださったり、接種に前向きになってくださる方が増えてくれればと思います。質問などもお待ちしておりますので、遠慮なくご相談下さい。